11月2日。

日本のボクシングファンにとっては井上尚弥がノニト・ドネアと雌雄を決するWBSSトーナメント決勝まであと5日に迫った木曜日です。

しかし、世界的にはカネロ・アルバレスがメキシコ史上4人目の4階級制覇を懸けてセルゲイ・コバレフのWBOライトヘビー級タイトルに挑む注目の土曜日です。

超弩級のメガファイトと被る、あるいは至近で前後する日程は、全くもって残念なことです。

メガファイトはお祭りです。祭りの「後」は試合を振り返り、誰もがその余韻を楽しみます。

今回のケースは祭りの「前」。ボクシングメディアもファンも祭りの準備に慌ただしく、極東と軽量級という二つの意味で世界から離れた試合への関心は否が応でも低くなります。

11月2日、メディアの報道もファンの注目も井上vsドネアの結果は、カネロvsコバレフの直前情報の大波に埋没します。

欧米が世界、ボクシングの中心をラスベガスとするなら、それはどうしようもないことです。

ラスベガスで人気のあるウェルター級やミドル級で戦うか、世界が羨む軽量級のメッカを日本に創造するしかありません。

前置きが長くなりました。
 

カネロvsコバレフ。
IMG_3054
【左】2014年、ホプキンスを倒してリング誌のFighter of the Year に輝いたセルゲイ・コバレフ。

【右】パッキャオが黄昏を迎えた今、ボクシング界の顔はカネロですが、Fighter of the YearはもちろんPFPキングにも選ばれたことがありません。カネロサポーターが反発するように「人気があり過ぎるが故の過小評価」なのでしょうか。それとも?



早くも多くのブッカーでオッズが立ち上がり、あらゆるボクシングメディアが戦前情報や予想で盛り上がっています。

今日はこの試合展開を俯瞰するのに世界で最も相応しい2人のレジェンドの言葉を拾います。

まずは、バーナード・ホプキンス。「死刑執行人」から「B-HOP」へ、そして「エイリアン」にまで昇華し50歳まで世界のトップ戦線で戦いました。

このホプキンスは2014年11月49歳10カ月のときに、コバレフに圧倒され大差判定負け、タイトルを失い引退への坂道をくだります。

「カネロとコバレフ、どちらにとっても危険極まるファイトになる。つまり、どちらにもKOチャンスがある」。

「カネロは今が全盛期でスピードとディフェンスで勝るが、コバレフほど大きくて強いパンチを持つ相手とは戦っていない」。

「ジャブの質はゲンナディ・ゴロフキンの方がやや上かもしれないが、それは体格を度外視しての話。現実では体格差があり、クラッシャーのジャブは tripleGよりも遥かに長く強い」。

「カネロは打たれ強さを証明して、コバレフは劣化していて打たれ脆くなっているが、その議論をするにも階級差を無視するのはナンセンスだ」。

「カネロはミドル級では打たれ強いが15ポンド上のライトヘビーでもそうだとは考えられない」。

▶︎エイリアンの心情的は「自分に圧勝したコバレフが下の階級から上げてきた人気者に負けるのは見たくない」ということかもしれません。

自身がオスカー・デラホーヤやフェリックス・トリニダードに対してやってのけた「人気者退治」を、コバレフに期待しているのでしょう。


そして、ホプキンスと同じくコバレフとの対戦経験があるアンドレ・ウォード

S.O.G.がホプキンスと違うのはコバレフと2試合戦っていること、そして何より2試合とも勝利を収めていることです。

「非常に面白い試合になる。154ポンド(ジュニアミドル級)で王者になったカネロは175ポンド(ライトヘビー級)では難しい試合になるかもしれない」。

「しかし、コバレフは私が戦ったときの全盛期ではない。そして彼がボディに致命的な弱点を抱えることも私が証明済み」。

「カネロが私の模範回答をなぞって、ボディを起点にコバレフをKOしても驚きはない」。



▶︎ウォードはカネロ勝利を予想。とはいえ、自分が最初に黒星をつけたコバレフが負けるのは「私が模範解答を示したから」。

プライドが滲み出てます。 

まー、ボクシングにVARがあればウォードvsコバレフ2戦目のフィニッシュブローはローブローで無効でした。