ナイジェル・コリンズの最近の記事、ESPNと英国BN誌から2本。
2本目は英国ボクシングニューズ誌から、ドーピングについて。
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大麻、マリファナ、カンナビス。
北米では「成人の娯楽用大麻の合法化」がじわじわと進行している。
現在、成人向け娯楽用カンナビスを合法化しているのはカリフォルニアやネバダ、ワシントン、マサチューセッツなど9つの州。
医療用として合法化、処方できる州は33にものぼっている。
ニューヨーク州のクオモ知事も「反社会的勢力の資金源を断つことが出来る」と合法化に取り組んでいる最中だ。
カンナビスの依存性はタバコ以下というデータもあり、合法化によってニューヨーク州だけで2億5000万ドル(約280億円)〜6億8000万ドル(750億円)の税収が見込めると見られている。
一方で、合法化で簡単により入手出来ることから「他の薬物への導火線になる」「子供が吸う危険が今以上に増える」「反社会勢力が扱う価格よりも低価格に設定しないと予想通りの税収確保は難しい」など反対意見も根強い。
また、タバコ以下と喧伝される依存性には真逆の検査結果も出ている。
このカンナビス、タバコのように喫煙したり、注射したりすることで反応が鈍り注意力が散漫になることが明らかになっていますが、世界アンチドーピング機関(WADA)と米国アンチドーピング機関(USADA)では能力向上効果のある薬物(PED)として禁止物質にリストアップされている。
ボクシングが盛んに行なわれているカリフォルニアとネバダ州ではカンナビスはタバコやアルコールと同じで、成人が楽しむことは合法化されている。
WADAもUSADAもタバコとアルコールは禁止リストに挙げていない。
運動能力向上の効果がない薬物まで禁止する必要性がどこまであるのだろうか。
ネバダとカリフォルニアのアスレティック・コミッションの代表、カンナビスをPEDだと考えていない。
しかし、政府の姿勢はWADAとその地域機関USADAの禁止物リストに準じるしかない。
19世紀後半からずっと合法だったカンナビスがどうして悪者になったのか?それは人種差別と誇大宣伝と政治がデッチ上げたことなのだ。
メキシコ革命が起きた1910年から、国境を越えてメキシコ人が米国に流れ込んだ。そしてちょうど現在と同じような、移民に対する警戒感が沸騰していく。
テキサスの警察では「カンナビスが暴力や犯罪組織の資金源になっている」「メキシコ人が『超人になれるクスリだ』と売りさばいている」と取り締り、エリック・スクロッサーはアトランティック・マガジンに「メキシコ人が米国の児童にカンナビスを広めている」と根も葉もない記事を書いた。
フェイクニュースは最近の発明品ではない、100年以上前にも移民への不安と恐怖を煽るウソが流布されていたのだ。
FBI初代長官エドガー・フーバーは1931年、ハリー・J・アンスリンガーを連邦麻薬局の初代長官に任命、カンナビスを徹底的に取り締り、1937年にはMarihuana Tax Actという法律が可決。
そもそもカンナビスを「マリファナ」と聞きなれない怪しい言葉で呼んだことも、明らかな悪意が込められていた。
アンスリンガーは「Reefer makes darkies think they're as good as white men.(マリファナを吸うと黒人やヒスパニックごときでも白人と同じくらいに優れていると勘違いを起こす)」とまで公言。
マイノリティへの差別を正当化するためだけでなく、合成繊維を発明したデュポン社(アンスリンガーのスポンサー)による麻織物を悪者にしたいという思惑もあった。
さらに禁酒法時代が終わり、連邦麻薬局の人員過剰のためにも酒に代わる悪者が求められていた。
リチャード・ニクソンの時代にはアンチ・カンナビスはさらに政治的に利用される。
「違法な薬物で正気を失ってる奴らの主張は間違っている」「ニクソン政権への不満分子は黒人とヒスパニック、ヒッピー。彼らを牢屋に閉じ込めるにはカンナビスが手っ取り早い」。
WADAやUSADAが、カンナビスを禁止薬物にリストアップした根拠は「米国で違法だから」という一点に尽きる。PEDとしての効果があるからではない。
そして、違法とされた背景は人種差別と政治的な陰謀によるものでしかない。
「カンナビスはPEDではないことは多くの研究で明らかにされている」と語るのはボタンタリー・アンチドーピング機関(VADA)の創始者マーガレット・グッドマン。VADAでは2012年にカンナビスを禁止リストから外している。
ボクシングの試合で、カンナビスが最も問題視されたのは2000年10月20日にミシガン州で行われたマイク・タイソンvsアンドリュー・ゴロタのノンタイトル10回戦。
TKO勝利を収めたタイソンの検体からカンナビスが陽性反応、無効試合になりタイソンは資格停止と20万ドルの罰金を科せられた。
長年のカンナビスユーザーであるボブ・アラムも「試合前にカンナビスを吸うべきではない。パフォーマンスに悪影響を与えて大きな事故につながる可能性があるからだ。しかし、試合前1ヶ月前なら?誰がそれを気にするというのだ?」とカンナビスをドーピングリストに入れることに異議を唱えている。
米国の4大スポーツのうち3つ、野球とアメフト、アイスホッケーではカンナビスへの検査は緩く、野球ではカンナビスの陽性反応で罰せられた選手は実質いない。ステロイドは明らかなPED、カンナビスは嗜好品でしかない。
ボクシングが抱える多くの問題の中で、カンナビスを禁止薬物から除外することは大きな問題ではないが、簡単に出来ることでもあるはずだが…。
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将来、タバコが米国で違法になれば禁止薬物リストに加わるのか?難しい問題ですが、現状でリストアップされている限り、選手はカンナビスに手を出してはいけません。
「カンナビスはPEDではないし、違法にされたのは人種差別や政治的な陰謀」だからといって、リストにある限りは正当化されるべきではありません。
米国に右に倣えの日本でも、カンナビスが合法化される未来があるかもしれませんが…日本でも産業用大麻の栽培が認められている特区がありますが、個人的には反対ですね…薬物への過度なはんのうなのかもしれませんが…。
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大麻、マリファナ、カンナビス。
北米では「成人の娯楽用大麻の合法化」がじわじわと進行している。
現在、成人向け娯楽用カンナビスを合法化しているのはカリフォルニアやネバダ、ワシントン、マサチューセッツなど9つの州。
医療用として合法化、処方できる州は33にものぼっている。
ニューヨーク州のクオモ知事も「反社会的勢力の資金源を断つことが出来る」と合法化に取り組んでいる最中だ。
カンナビスの依存性はタバコ以下というデータもあり、合法化によってニューヨーク州だけで2億5000万ドル(約280億円)〜6億8000万ドル(750億円)の税収が見込めると見られている。
一方で、合法化で簡単により入手出来ることから「他の薬物への導火線になる」「子供が吸う危険が今以上に増える」「反社会勢力が扱う価格よりも低価格に設定しないと予想通りの税収確保は難しい」など反対意見も根強い。
また、タバコ以下と喧伝される依存性には真逆の検査結果も出ている。
このカンナビス、タバコのように喫煙したり、注射したりすることで反応が鈍り注意力が散漫になることが明らかになっていますが、世界アンチドーピング機関(WADA)と米国アンチドーピング機関(USADA)では能力向上効果のある薬物(PED)として禁止物質にリストアップされている。
ボクシングが盛んに行なわれているカリフォルニアとネバダ州ではカンナビスはタバコやアルコールと同じで、成人が楽しむことは合法化されている。
WADAもUSADAもタバコとアルコールは禁止リストに挙げていない。
運動能力向上の効果がない薬物まで禁止する必要性がどこまであるのだろうか。
ネバダとカリフォルニアのアスレティック・コミッションの代表、カンナビスをPEDだと考えていない。
しかし、政府の姿勢はWADAとその地域機関USADAの禁止物リストに準じるしかない。
19世紀後半からずっと合法だったカンナビスがどうして悪者になったのか?それは人種差別と誇大宣伝と政治がデッチ上げたことなのだ。
メキシコ革命が起きた1910年から、国境を越えてメキシコ人が米国に流れ込んだ。そしてちょうど現在と同じような、移民に対する警戒感が沸騰していく。
テキサスの警察では「カンナビスが暴力や犯罪組織の資金源になっている」「メキシコ人が『超人になれるクスリだ』と売りさばいている」と取り締り、エリック・スクロッサーはアトランティック・マガジンに「メキシコ人が米国の児童にカンナビスを広めている」と根も葉もない記事を書いた。
フェイクニュースは最近の発明品ではない、100年以上前にも移民への不安と恐怖を煽るウソが流布されていたのだ。
FBI初代長官エドガー・フーバーは1931年、ハリー・J・アンスリンガーを連邦麻薬局の初代長官に任命、カンナビスを徹底的に取り締り、1937年にはMarihuana Tax Actという法律が可決。
そもそもカンナビスを「マリファナ」と聞きなれない怪しい言葉で呼んだことも、明らかな悪意が込められていた。
アンスリンガーは「Reefer makes darkies think they're as good as white men.(マリファナを吸うと黒人やヒスパニックごときでも白人と同じくらいに優れていると勘違いを起こす)」とまで公言。
マイノリティへの差別を正当化するためだけでなく、合成繊維を発明したデュポン社(アンスリンガーのスポンサー)による麻織物を悪者にしたいという思惑もあった。
さらに禁酒法時代が終わり、連邦麻薬局の人員過剰のためにも酒に代わる悪者が求められていた。
リチャード・ニクソンの時代にはアンチ・カンナビスはさらに政治的に利用される。
「違法な薬物で正気を失ってる奴らの主張は間違っている」「ニクソン政権への不満分子は黒人とヒスパニック、ヒッピー。彼らを牢屋に閉じ込めるにはカンナビスが手っ取り早い」。
WADAやUSADAが、カンナビスを禁止薬物にリストアップした根拠は「米国で違法だから」という一点に尽きる。PEDとしての効果があるからではない。
そして、違法とされた背景は人種差別と政治的な陰謀によるものでしかない。
「カンナビスはPEDではないことは多くの研究で明らかにされている」と語るのはボタンタリー・アンチドーピング機関(VADA)の創始者マーガレット・グッドマン。VADAでは2012年にカンナビスを禁止リストから外している。
ボクシングの試合で、カンナビスが最も問題視されたのは2000年10月20日にミシガン州で行われたマイク・タイソンvsアンドリュー・ゴロタのノンタイトル10回戦。
TKO勝利を収めたタイソンの検体からカンナビスが陽性反応、無効試合になりタイソンは資格停止と20万ドルの罰金を科せられた。
長年のカンナビスユーザーであるボブ・アラムも「試合前にカンナビスを吸うべきではない。パフォーマンスに悪影響を与えて大きな事故につながる可能性があるからだ。しかし、試合前1ヶ月前なら?誰がそれを気にするというのだ?」とカンナビスをドーピングリストに入れることに異議を唱えている。
米国の4大スポーツのうち3つ、野球とアメフト、アイスホッケーではカンナビスへの検査は緩く、野球ではカンナビスの陽性反応で罰せられた選手は実質いない。ステロイドは明らかなPED、カンナビスは嗜好品でしかない。
ボクシングが抱える多くの問題の中で、カンナビスを禁止薬物から除外することは大きな問題ではないが、簡単に出来ることでもあるはずだが…。
***************
将来、タバコが米国で違法になれば禁止薬物リストに加わるのか?難しい問題ですが、現状でリストアップされている限り、選手はカンナビスに手を出してはいけません。
「カンナビスはPEDではないし、違法にされたのは人種差別や政治的な陰謀」だからといって、リストにある限りは正当化されるべきではありません。
米国に右に倣えの日本でも、カンナビスが合法化される未来があるかもしれませんが…日本でも産業用大麻の栽培が認められている特区がありますが、個人的には反対ですね…薬物への過度なはんのうなのかもしれませんが…。
コメント
コメント一覧 (5)
少し訂正します。
薬物に関して海外は営利目的ではなかったら中毒患者、日本では営利目的関係なく使用した者、使用する者は全てただの犯罪者です。
フシ穴の眼
がしました
薬物に関して海外は営利目的ではなかったら中毒患者、日本ではただの犯罪者です。
今の日本は昔より薬物に関しては厳しい目で芸能人なんて昔と違い再起不能。
ただ日本のこの環境は構成の道を断たせてるようにも感じるので正しい道なのかと言えば違う気もしますが。
THCが運動能力の向上に繋がる事は先ずないし覚醒剤のように集中力が増し試合に影響を及ぼす事はないですが精神安定の作用があるTHCも禁止薬物にするのは当然だと思うしすべきです。
マイクタイソンも大麻産業に手を出してますし合法化が進むアメリカではボクシングに限らずスポーツとの共存に賛否が出て来るだろうとは思ってました。
フシ穴の眼
がしました
とかタイソンの自伝に書かれてたのを思い出しました。
ただ、大柄なゴロタと戦う恐怖心を和らげるために大麻を使ったとも書かれており、
並々ならぬ恐怖心と戦わなければならないボクサーにとって大麻の恩恵は少なくないのでは?と思いました。
個人的にはボクサーが大麻に頼って恐怖心をコントロールしてる姿はちょっと嫌なので、あんまりリストから外して欲しくないですね…
フシ穴の眼
がしました