2019年上半期最大のメガファイト。

エロール・スペンスJr.とマイキー・ガルシアの大勝負は、大方の予想であった「一方的な展開」でしたが、その内容は誰も予想できなかったものでした。
Final Punch Stats
FIGHTERTOTALJABSPOWER
Spence345 of 1082 (32%)108 of 618 (17%)237 of 464 (51%)
Garcia75 of 406 (18%)21 of 188 (11%)54 of 218 (25%)


サウスポーのスペンスが放つ長くて強いリードにマイキーは蹂躙され、中盤以降は「ロベルト・ガルシアは何をしてるんだ?タオルを投げろ」と思った瞬間も何度かありました。

「スピードとテクニック、つまりボクシングでスペンスがマイキーを圧倒した」(中継したFOXの解説)というのは間違っています。

リーチの長さとパワーでマイキーを封じ込めたのです。それは、体格差がその根底にあったからです。

しかし…互角と見られていたスピードでも、スペンスが上回りました。

単なる体格差というだけでなく、スピードや反射などまで含めたスペンスの圧倒的な身体(能力)にマイキーは為す術がなかったのです。

今回のパンチ統計は、この試合の実態を如実に伝えてくれています。

スペンスはマイキーの5倍以上ものジャブをヒットさせ、パワーパンチは4倍以上も炸裂させました。

そのパワーパンチに至っては命中率は51%、小さなマイキーを正確な強打で削っていきました。

オフィシャルは120−108*2/120-107、三者ともフルマークで王者を支持する完封劇。

キャリア初黒星を喫したガルシアは「私がやったことは誰もやろうとしなかったことだ。後悔は無い。最強のウェルター級王者と12ラウンド戦ったんだ。彼は偉大な王者。The Truthは本物だった」と完敗を認め、今後については「タイトルを保持したままのライト級かジュニアウェルターに落とすことを考えなくてはならない」とウェルターへの再挑戦も断念しました。

「兄でトレーナーのロベルトは試合を止めようとしていたかもしれないが、私が大丈夫だと制した。もし、この試合結果でロベルトが無策だったと批判するのは間違っている」と、兄想いの一面も。

マイキーと同じフェザー級から階級を上げているワシル・ロマチェンコもライト級からクラスを落とすことを検討中です。

複数階級全盛の昨今でも強豪とシノギを削るとなると、やはり分厚い階級の壁が立ちはだかることを今日のカウボーイスタジアムでも思い知らされました。

そして、マイキー以上にウェルターが適正階級ではないことが明らかなマニー・パッキャオがいかに特別な存在だったかということも…いえいえ過去形はいけませんね。

「この試合のテーマはスマートに戦うことだった。これこそスイートサイエンスというゲームをお見せできただろう。体格で押さないで右ジャブを有効に使ったのは、それがマイキーを最も苦しめるから」と胸を張ったスペンスは「次?この大きなスタジアムで歴史(史上唯一の八階級制覇)を作った伝説と戦いたい。もし、それが叶えばこんなに名誉なことはない」と、あらためてパッキャオにラブコール。
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"I'm so happy to be here in Dallas, and I hope I will be back here soon."   思い出のダラスに再訪できて最高だ。そして、ここにまた戻って来るよ、そして次はリングサイドじゃない。近いうちにまたお会いしましょう。〜マニー・パッキャオ

大歓声を受けてリングに上がったパッキャオは「どうして戦わない理由がある?私たちはアル・ヘイモンがマネジメントしている。交渉は簡単に成立するはずだ」とスペンスに答えました。

優先順位は、スペンス戦よりもはるかに巨額のカネが動くフロイド・メイウェザーとの再戦ですが、フィリピン上院議員のパッキャオが試合ができるのは、国会が閉会期間の1月か7月と限定されています。

「大晦日に日本のキックボクサーとスパーリングしたときのメイウェザーの肉体は、別人のようにだぶついて本来の動きから程遠かった。彼の性格を考えても、7月のパッキャオ戦なんて絶対に受けないだろう」(ESPN)と見られていますから、スペンス戦は大いに可能性があります。

そして、パックマンがすでに圧倒的不利のオッズが立てられているスペンス戦に勝つようなことがあれば…メイウェザーは間違いなく動くでしょうね。