日清食品グループが11日、駅伝から撤退すると発表しました。

「成績低迷が原因」で「部員を現在の14人から大幅に減らす」、今後は「個人での世界大会出場を目指す」ということです。

9月に東京2020の出場枠を賭けて激突するマラソングランドチャンピオンシップの出場権を持つ佐藤悠基と村沢明伸は、日清食品のサポートで活動を続けるとのことですが、他の12人は〝クビ〟ということです。

このニュースで解せないのは、すでに今春の入部内定していた二選手についても「内定取り消し」となった点です。

そこまで、急な決定が迫られる事案とは考えにくい話ですが、トップダウンなんでしょう。

「錦織圭や大坂なおみと比べたら、イメージも知名度も低い陸上なんてやめちまえ!」って感じですね。

ニューイヤー駅伝で優勝しても、カップヌードルのCMに還元できるわけでもなし、10人以上の長距離選手を抱える「実業団」スタイルよりも、有望なアスリートに投資を集中する「個人支援」スタイルに転換したということでしょう。

実業団としてのチームを持たない日本生命が、桐生祥秀をサポートしているスタイルと同じです。

「カネだけ出すから、結果だけ出してくれ」。つまり「結果をカネで買う」ということです。

悪いことじゃありません。

効率を追求すると、そこに行き着くのは当然です。

営利団体である民間企業が選択するやりかたとして、至極真っ当なことです。

これからは、このスタイルが企業スポーツの主流になりそうです。

確かに「実業団」チームを抱えると、選手から監督・コーチ、トレーナー、練習場所や、スケジュール管理まで、コストのかかる重たいフルラインでのサポートが必要となります。

社員の一体感・愛社精神を高めるツールであった実業団スポーツは、その役割を終えました。

終身雇用制はとっくの昔に崩壊し、愛社精神や社員の一体感と会社の利益が必ずしも直結しない時代です。

コストやリスクと、効果とリターンが釣り合わない実業団スポーツは、20世紀の遺骸でしかありません。

たとえ、それが20世紀の日本のスポーツシーンを彩る名選手を育んだゆりかごだったとしても。



かつては陸上と並んで実業団の顔の一つだった社会人野球も、多くの名門チームが姿を消しました。

落合博満の東芝府中も、野茂英雄の新日鉄堺も、今は跡形もありません。

もし、あのチームが存在していなければ、大器晩成の見本のような彼らは100%間違いなく、私たちの目に触れることはありませんでした。

そう思うとゾッとする話です。
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いいえ、もしかしたら、今、私たちは、もうすでに何人もの〝落合博満〟や〝野茂英雄〟を喪い続けているのかもしれません。

仕方がないことです。