12月22日、ニューヨークはバークレイズセンター。

その判定が大きな議論を巻き起こしたのは、WBC世界ジュニアミドル級タイトルマッチ:王者ジャーメル・チャーロvsトニーハリソンの一戦でした。(WOWOWでは1月28日放送予定)

ハリソンは3−0のユナニマスデジション、大番狂わせを起こしてタイトル奪取に成功。

スコアは115−113が二人と、116−112が一人。三人のジャッジは、ほぼ同じ採点基準でスコアしたと考えられます。
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このジャッジを、ESPNの看板記者ダン・ラファエルは「ジャーメルが明らかに勝った試合」「判定がアナウンスされた瞬間、我々だけでなく、当のハリソンが驚いていた」と批判しています。
Tony Harrison (28-2, 21 KOs) got an absolute gift decision just in time for Christmas against Jermell Charlo (31-1, 15 KOs) to claim a junior middleweight world title he absolutely did not deserve.  
Dan Rafael
トニー・ハリソンはクリスマスでもあるまいに、とんでもないタナボタの判定勝利のプレゼントを受け取った。しかし、その判定は明らかに間違ったものだった。 ダン・ラファエル

しかし、同じESPNの解説者テディ・アトラスは「Tony Harrison's victory over Jermell Charlo well deserved(ハリソンの勝利は十分納得できるものだ)」と反論しています。

以下、アトラスの弁です。

「私はことあるごとに糾弾してきた。奇妙な判定はジャッジが無能か、ジャッジが買収されているから起きる。そんな理解を越えた判定がボクサーを傷つけ、多くのファンを失う原因になっている」 。

アトラスは、そう前置きした後に「今回の判定に関しては三人のジャッジは無能でもないし、腐敗してもいないと断言できる」と啖呵を切っています。

「どちらが強く、攻撃的か、強烈なパンチを放ったか、そんなことは判定には一切関係ない。どちらが正確なパンチを打ったか、それだけが 判定されなければならない」。

「人間は、どちらのパンチが強いかについ目が行ってしまう。 ボディビルのコンテストならそれでいい。しかも人間の判断は、大観衆の応援や、解説者の言葉にも大きく影響される」。

「多くの人は私の意見に賛成できないだろう。しかし、もう一度ビデオを見直してご覧なさい、必ず音声を消して。そして私の質問の答えを考えてください」。 

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「ジャブのタイミングが優れているのはどちらでしょうか?頭を振って相手の攻撃を無効にしているのはどちらでしょうか?」。 

「そしてジャーメルは高い身体能力と強いパンチを持っていましたが、引き出しは少なく、画一的な戦い方しか出来ませんでしたね?」。

One night showed what the sport dubbed "the sweet science" is all about.

 この判定は、どうしてボクシングが〝優れた科学〟と呼ばれているのかを、これ以上ないほどはっきりと教えてくれたのだ。


「さて、最後の質問です。科学的に戦ったのは、どちらのボクサーでしょうか?」。


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さすがのアトラスも、村田諒太vsアッサン・エンダム第1戦は117−111で村田勝利と見ていましたから、無意味にパワーボクサーを毛嫌いしているわけではないのは理解しますが、それにしてもどうなんでしょうか?

スポーツは「科学的に戦った方が勝ち」、これは納得です。

しかし「ジャブを多用するのが科学的で、強打を振り回すのが非科学的」というロジックは間違っていると思います。

まあ、いろんな見方があっていいし、アトラスのいいところは好き嫌いではなく、その判断基準がブレないことです。

カネロvsGGGは「第2戦はGGGの勝ち」、そして「最も科学的に戦うボクサーはフロイド・メイウェザー」。

「ボクシングは Sweet Science であってそれ以外では一切ない」という一神教の敬虔な信者は、賛同できなくとも潔くて嫌いじゃありませんが…でもねぇ。