明日に迫ったカネロ・アルバレスのニューヨーク披露宴。

この試合のセミファイナルにセットされているのがIBFジュニアライト級タイトルマッチ、王者テビン・ファーマーvs挑戦者フランシスコ・フォンセラの一戦です。

ファーマーは4敗しているものの、いずれもデビュー12戦までのもの。その後は20連勝1無効試合と連勝街道をひた走っています。

この無効試合が、昨年12月9日の尾川堅一戦です。

圧倒的不利と見られた尾川でしたが、HBOが全米生中継する大舞台で見事に2−1の判定勝利。

しかし、試合前に実施されたランダムテストで採尿したA、B、いずれのサンプルも禁止薬物に陽性反応を示したことから、試合は無効となってしまったのです。

尾川には罰金(ファイトマネーの一部没収)と、JBCからも1年間のライセンス停止処分が課せられました。

当然の報いです。他のスポーツと比較すると、そのペナルティは軽過ぎるほどです。
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また先日は、強豪高校の女子長距離選手が持久力を向上させる鉄剤注射を処方していたことが問題になったばかりです。

鉄剤は、ほぼ全ての機関で禁止薬物にリストアップされていませんが、重度の貧血治療に用いられるもので、ヘモグロビン濃度を上げるだけでなく、内臓に鉄分が蓄積され肝硬変などを引き起こす恐れもあるといわれています。

「『あいつは鉄剤を打っている』とよく聞いていたが、禁止されていない薬物なら良いわけがない。スポーツの本質から離れている」(増田明美)という声は以前からあがっていましたが、その通りです。

その薬物がリストに載っていなくてもこれは〝ドーピング〟です。

日本人は倫理観が強く、スポーツを「単純な競争」ではなく「道」と捉えているから、ドーピングなどに手を出さない。

そんな、気楽なお花畑に住んでいられる時代はとっくに終わっています。 

選手はどんなものにでもすがる。

たとえそれにカネが直接絡んでいない高校スポーツでも、卑劣なことが蔓延しているのです。

「カネロは故意にドーピングするようなヤツじゃない」とか「道の精神が身についている日本人は故意にドーピングしない」なんてことは、フィクションでしかありません。

そんな、後からの言い訳は通用しません。

厳罰で対処するしか、この問題に対抗する手段はありません。

最も厳しいペナルティを課している自転車や陸上競技でも、ドーピングは後を絶たず「厳罰でも抑止効果が低い」と嘆かれていますが、軽いよりも重い方が抑止効果があるに決まっています。

ドーピングが卑怯な行為というだけでなく、ボクシングのように対戦相手の安全を脅かすスポーツではより重いペナルティが求められますが、そうではないのが実態です。

世界的な統括団体がないということは、悲劇です。

そのスポーツの権威を失墜させ、風紀や道徳までも荒廃させてしまうのですから…。