フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

 「Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。」

いよいよ日本時間9月27日に迫った、今年最初のPPVイベント。その主人公はカネロ・アルバレスでもマニー・パッキャオでもありません。

ローカルヒーローのジャモール&ジャーメルのチャーロ兄弟です。

双子の30歳は人気階級のミドルとジュニアミドルのタイトルホルダー、ともに強敵を迎えます。

WBCミドル級王者ジャモールは、現代では絶滅したはずの〝無冠の帝王〟セルゲイ・デレビャンチェンコ、WBCジュニアミドル級王者ジャーメルはWBA/IBF/IBOの3団体統一王者ジェイソン・ロサリオを迎え撃ちます。

チャーロ兄弟はリングの中でキャリア最強の敵と戦うだけでなく、リングの外では人生初のPPVファイターとして「数字」というこれまた厄介極まる強敵とも対峙することになります。

今回は兄弟が2つのパートでそれぞれメインイベントに出場する、斬新なイベント。途中でオペラや昔の大作映画のようなインターミッション(休憩時間)が設けられています。

ここで、ShowTIMEの手がけた過去の名勝負などがドキュメンタリー的に流されるのでしょうか?

ShowTIMEスポーツのステファン・エスピノサは「兄弟で30万件」を目標に掲げていますが「全米レベルの人気に疑問符がつくチャーロ兄弟には荷が重い」という厳しい見方もあります。

それでも、ボクシングファンとしては何としても成功して欲しいです!
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と書きつつも、今夜のお話はジェイソン・ロサリオ

前戦(2019年1月18日:ジュリアン・ジャクソン戦)で1−20のオッズを引っくり返した「154ポンドのマニー・パッキャオ」です。

今日のオッズはジャーメル2/9(1.22倍)*ロサリオ4/1(5倍)と、昨日の1/4(1.25倍)*ロサリオ15/4(4.75倍)からほぼ平行線。

大番狂わせを起こしたジャクソン戦ほどの大差では無いものの、依然として明白なアンダードッグです。

この25歳のドミニカ人は。生い立ちまでもが「カリブ海のパックマン」です。

幼い頃からシングルマザーの家庭で極貧に喘ぎ、上下水道も配備されていない段ボールで壁を仕切った家で育ちました。

食事は毎日口に出来ませんでした。母親のイザベル・バスタードはハウスクリーニングの仕事を掛け持ちして懸命にお金を求めましたが、子供達に毎日の食事を与えるのは非常に厳しい金額しか稼げませんでした。

家族の日課は近所のゴミ箱から残飯を漁ることでしたが、貧しい地域ではそれもままなりません。

「パッキャオのような話だと言われるけど…私よりも貧しい少年時代を送った人なんて本当にいるのかな?信じられないよ、それくらいに惨めで貧しかった」。

「何日も食べ物を口に出来ないことも珍しくなかった。食べ物を求めて路上を彷徨っていた」。

「あの記憶が今の私を形作っている。今ではドミニカに大きな家を建てた、車も買った…でも私は飢えている。いくらでも食べものを口にできる環境になっても、厳しい練習と減量に耐えることができる。あの頃と同じハングリーなままだ」。

「自分がワールドクラスなのはわかっていたけど、私にはコネクションがなかった。ジャクソン陣営は噛ませ犬を買ったつもりだったろうけど、私はついにチャンスが来たと、命がけでキャンプを過ごした」。

「このクラスでベルトを持っていれば、次のチャンスが訪れる。我慢するんだと覚悟していたら、チャーロ戦が決まったんだ。しかもPPVイベントだ」。

トレーナーのルイス・ペレスは静かに語ります。「ジャーメルはいいボクサーだが、欠点も多い。それはロサリオも同じだ。欠点の無いボクサーはいない。それを何で補うかで勝負が決まる。ジャーメルにとってロサリオは間違いなく最強の敵だ」。

「経済的に余裕のできたロサリオは新しい家や車を買わずに、16週間のキャンプを選んだ。私たちはやるべきことは、全てやった」。

アゲインストのオッズと予想について聞かれたロサリオは「パッキャオのようだと言っておいてそれを聞くのかい?私はネットや雑誌、新聞のオッズや戦前予想をチェックしてる。そういう数字や記事を見るとワクワクしてくる。試合が終わったときの、あのなんとも言えない、世界を引っ繰り返したような快感はたまらない」と笑います。

「次の試合くらいで私もパッキャオみたいに語ろうか?『あなたたちの予想通りに現実が運ぶのなら私は今ここに座ってあなたたちの質問を受けていない』」。



個人的には番狂わせの可能性はあると見ますが、ジャーメル有利は明らかです。

もし、2試合続けて番狂わせとなれば…。勝ち方が鮮烈なノックアウトなら、次戦はジャモールも有力でしょう。

そうなると物語が続きます。

もちろん、ジャモールがウクライナのテクニシャンに完勝することが大前提ですが。
 
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このブログでも繰り返しているように、日本では米国ボクシングに対して多くのトンデモ誤解が生まれています。

「軽量級にもメガファイトがある」「PPVファイターは人気スター」「ラスベガスで試合をするのは試合の掛け金の一部が選手報酬に充てられるから」なんてのはその代表例です。

そして「米国ボクシングはPPVが基本」というのも、そんな誤解の一つです。
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HBOのPPVといえばパッキャオでしたが、いまや「ShowTIMEの顔」であり「ESPNの看板」です。

PPVに乗る試合は、全体の1%にも遠く届かない超レアで超ハレのイベントなのです。

ShowTIMEやESPN、今は亡きHBOはボクシング番組と予算を編成しています。長らく米国ボクシングの象徴であったHBOの予算は市場の衰退とともに激減傾向を辿り、2018年に完全撤退してしまいました。

この番組予算と興行収入(ゲート収入や招致フィー)の中から選手報酬が捻出されるわけです。

「人気選手」が激突するビッグファイトになると、番組予算300万ドル+興行収入200万ドル+スポンサー収入100万ドル=ざっと600万ドル近くの売り上げが最大規模で期待できます。

ここからイベントに登場する少なくとも5試合10人の報酬が分配されるわけです。プロモーターの取り分を差し引くと、どんな「人気選手」でも500万ドルを手にするのは非常に難しいことがわかるでしょう。

カネロ・アルバレスやマニー・パッキャオのような「超人気選手」にふさわしい1000万ドル以上の報酬は、このシステムでは賄いきれません。

そこで登場するのがPPVです。このシステムでは番組予算はほとんどかかりません。一件70〜100ドルの視聴料を課金し「超人気選手」の高額報酬を「保証」するのです。

よく聞く「パッキャオがキース・サーマン戦で最低保障されるのは1100万ドル」という「保証」です。

「超人気選手」の高額報酬を支払ってビジネスとして成立させるには、その高額報酬の2倍を売り上げると成功とされています。

1100万ドルなら2200万ドル、@75ドルのPPVなら29万3000件を売らなければならない計算です。おそらく30万件が累進的歩合が発生するラインだったと思われます。

パッキャオvsサーマンは50万件をセールス。このラインを余裕で突破しましたから、40歳の伝説は最終的に2000万ドル以上を手にしたと見られています。

さて、このPPVの関門がいかに高いかは簡単に想像できるでしょう。

最近では「人気選手」から「超人気選手」に変換する可能性のあるタレントとして、テレンス・クロフォードやゲンナディ・ゴロフキン、アンドレ・ウォードらがこの牙城に挑んで見事に玉砕、散りました。

パッキャオやカネロといった「超人気選手」とからむ試合のみでクロフォードやGGGはPPVの舞台に立つ可能性はありますが、単体で全く結果を残せなかった彼らにはもうチャンスはないでしょう。

恐ろしいほどシビアな世界です。

大会場をフルハウスにすらできない、ライト級以下のワシル・ロマチェンコらはPPVへの挑戦すら許されないのが現実です。



ところが、このPPVへの取り組みに大きな変化が起きようとしています。

パンデミックにより興行収入が絶たれて片翼飛行となった現状で「今まで超大型機(超人気選手)にしか搭載しなかったPPVを、ある程度の飛行機(人気選手)でも標準装備することで従来の報酬が支払うことが出来る」(ShowTIME)というのです。

これは、一つの賭けです。

今は非常事態、確かに、そういう賭けに出ないと、サイコロを振らなければいけない状況です。
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ShowTIMEは今週末にジャモール&ジャーメルのチャーロ兄弟をPPVに乗せます。

さらに来月24日にはやはりShowTIMEがガーボンタ・デービスvsレオ・サンタクルスをPPVでオンエアするのです。

人気階級のジュニアミドルとミドル級で最強候補の一角であるチャーロ兄弟はともかく、デービスとサンタクルスは「人気選手」のステージにあるとはいえ、米国では関心の低い軽量級が主戦場です。

層が薄く、名前のある選手が乏しい軽量級でPPVを打つために「階級差のある二人が二つのタイトルを同時に懸けて戦う」シュールなマッチアップになったのでしょう。

その意味では、圧倒的にShowTIMEを支持します。欺瞞100%の「レナードvsラロンデ」とは違います。

ライト級以下の軽量級がPPVに乗るのは、パッキャオがらみを例外にすると、2001年のマルコ・アントニオ・バレラvsナジーム・ハメド(フェザー級)以来史上2度目の快挙。

クロフォードやGGGという実力者ですら門前払いされたPPVの敷居を、彼らより地味に映るチャーロ兄弟に越えることが出来るのでしょうか?ましてや、関心の低い軽量級のデービスとサンタクルスなんて売れるのか?

注目です!

まず週末のチャーロ兄弟ですが、戦いぶりは十分面白くPPVスターになる可能性はゼロではありません。

しかも、人気階級。つまり、ファンが望むカードがいくつも考えられるわけです。ここが、井上尚弥のバンタム級をはじめライト以下の軽量級では絶望的なまでに欠落してしまってるのです。

ただ、人気クラスでファンが望むカードとはすなわち、非常に危険な相手と戦うということを意味します。

この土曜日、WBCミドル級王者ジャモールが対するのはセルゲイ・デレビャンチェンコ。13勝10KO2敗の星勘定だけを見ると、村田諒太に挑戦したスティーブン・バトラー(28勝24KO1敗)の方がはるかに強そうです。

もちろん、34歳のウクライナ人がミドル級の誰に取っても恐るべき強敵であることは、ボクシングファンなら知らない人はいません。

4団体17階級は「無冠の帝王が絶滅した時代」ですが、デレビャンチェンコにはその香りが漂っています。

さて、オッズも不気味なウクライナ人の番狂わせを嗅ぎつけて接近傾向です。

ジャモールが4/6(1.67倍)、デレビャンチェンコ6/4(2.5倍)。一時、5倍近くをつけたウクライナ人が猛追しています。リアリティのある数字です。

ウクライナ人がヒューストン生まれの30歳を倒しても、番狂わせと呼べるかどうか?微妙な数字で当日を迎えるかもしれません。

もう一つのメインイベント、ジャーメル・チャーロとジェイソン・ロサリオのWBC/WBA/IBFのジュニアミドル級3団体統一戦も楽しみです。

こちらはジャーメル1/4(1.25倍)、ロサリオ15/4(4.75倍)で、前週から差が開いています。個人的には、このカードも番狂わせがあってもおかしくないと見ますが、現地ではジャーメル有利を後押しする新情報が出ているのかもしれません。



さて、このイベントのオッズ、試合まで5日を切ってようやくルイス・ネリ(1/20=1.05倍)vsアーロン・アラメダ(8/1=9倍)、ジョンリール・カシメロ(1/4=1.25倍)vsデューク・ミカー(9/2=5.5倍)の不人気クラスの掛け率もオープンしました。

軽量級のオッズは出るのも遅いし、数字も本当にざっくりで、ほとんど変動しないまま試合を迎えるという「誰も関心がない」ことが滲み出ています。


こういうところからも、、軽量級が舐められてる状況が痛々しく伝わってきます。井上のオッズもいずれ出るでしょうが、ざっくりでしょうねぇ…。ESPNが「井上の名前なんて誰も知らない」と報じてますから、オッズも出ないかも…というのは冗談で、そろそろ出してあげて欲しいです。

ただ、PPVイベントは「カネがかかる」という事情と「超人気選手の試合だからアンダーに関係なく売れる」というマニアの足元を見るプロモーターという背景から、アンダーカードが超しょぼくなる傾向があります。

そのイクスキューズとして、プロモーターは「世界戦」を組み入れるわけです。もちろん、コスパ最高の軽量級です。

パックメイの試合は典型で、いつもその不満不平で投稿欄が溢れています。そこを逆手にとって(そういうわけでもないのでしょうが結果的に)パッキャオは一気にスターダムに駆け上がりました。

この、PPVイベントの前座(歩合とかはもちろん入りません)に選ばれる軽量級は「よほど魅力がある選手」か「大手プロモーターの庇護や超人気選手、その陣営のお気に入り」です。

この境界線はあいまいですが、前者はパッキャオ、後者はルイス・ネリです。

ネリにはメキシコ人という看板がありますが、ジュニアフェザー以下の軽量級という重い十字架も背負って、けして人気があるとはいえません。

ところが、パッキャオやフレディ・ローチに取り入り、そこを離れるとカネロとレイノソ親子に可愛がられるという稀代の「人たらし」ぶりを見せて、メガファイトの前座をつとめ、軽量級では考えられない〝準・井上尚弥〟級の報酬を稼いでいるのです。

このブログでも紹介済みですが「ネリ・システム」、人気ゼロでも10万ドルファイター(それどころか今や30万ドルファイター)になれる、ネリの「人柄」も書きたいですね、近々。

バンタムとかジュニアフェザーでキャンキャン吠えてるネリには一生縁の無いPPVスターになるには「超人気者」の座を掴み取ることが、とにかく必要条件です。「人気選手」ではありません、「超人気選手」です。

ネリは「人気選手」(サンタクルスやアブベル・マレスら)にも手がかからない、可哀想な不人気選手です。
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「人気選手」時代のパッキャオ。

そして、PPVスターの十分条件は負けないことです。

「パッキャオは負けてるじゃないか」。確かにパッキャオはPPVスターになってから4敗もしていますが、いまだにボクシング界屈指の磁力を持っています。

「パッキャオの道」を辿れるなら、4敗しようが5敗しようが関係ありません。PPVスターはほんの一握りの選手にしか辿り着けない究極のステージですが、パッキャオはその中でも特別です。

ShowTIMEスポーツの最高責任者ステファン・エスピノサは、週末のイベントについて「ダブルヘッダーということも考慮すると30万件が合格ライン」と具体的な数字を出しています。

5つの世界戦とはいえ、そのうち3つは〝戦力〟にならない軽量級です。実質〝二人がかり〟では結構なハードルですが…30万件、突破して欲しいですね。

このPPVは、忌々しいパンデミックに向かって放った抵抗の矢です。突き刺さって欲しい!

エスピノサの「30万件」は難しくても、20万件でも矢は刺さらずとも届いたと、思います!

ボブ・アラムは「チャーロ兄弟で30万件?これは笑話だ」と嫌味を口にしてますが、どんな数字に終わっても「トップランクが取り作りまくっても5万しか売れなかったクロフォードよりは絶対にはるかにマシ」(エスピノサ)です。
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昔々、何度も記録会などでお世話になった日本体育大学健志台キャンパス。
大学キャンパスとはいえ、健志台には赤煉瓦は期待できません。

昨日の午後遅い時間に出発。

今の自宅から10㎞もない距離にあるのは分かってました。いつか、チラッと見に行こうと思ってましたが、ズルズルと、今日まで行けてませんでした。

まー、以前お邪魔したのは30年も前。

田園都市線青葉台駅からバスに乗ったはずで、土地も記憶の蘇りなどもなく、完全に初めて訪れる場所…。

3〜4回はここのトラックで走ってるはずですが、記憶というのは曖昧で、サーフェイスがアンツーカーだったかタータン(全天候)だったかもあやふやな始末。

せっかく辿り着いたものの、悲しいかな、閉門時刻が過ぎていたようで構内には入れず。
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復路は違うルートで自宅を目指します。

日体大のすぐ近くに野球場二面を発見。

トラックはお目にかかれませんでしたが、パックネットにブルペン、ベンチまであるなかなか良さげな野球場です。
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風流なブルペンです。

野球やりたくなってきます。

なんていつも書きつつ、しばらくしてません。

やっぱりスポーツは教えるもんじゃなくて、やるもんです。
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